【中医学解説】寒暖差アレルギー
概要
寒暖差アレルギーは西洋医学的には「血管運動性鼻炎」とされ、アレルゲンを介さず気温差など物理的刺激により鼻粘膜が過敏に反応して発症する。中医学的には「鼻鼽」や「鼽嚏」に相当し、その病理基盤は肺気虚を中心とした衛表不固にある。肺は鼻と関わり、外界からの影響を最も受けやすいため、肺気の虚弱は気温差という刺激を受けて過敏反応を呈する要因となる。また、脾の運化失調による水湿停滞や腎陽虚による体内の温煦不足も加わることで、寒暖差に対する抵抗が弱まり、症状を誘発・助長する。病機的には「本虚標実」の特徴をもち、本は肺・脾・腎の虚、標は風寒や湿の外邪あるいは水湿痰飲の停滞である。症状は水様性鼻汁、くしゃみ、鼻閉を主とし、発作性に出没する。
弁証類型
肺気虚証
肺の気が不足し衛外が固まらず、寒暖差という外界の変化に過敏に反応する。くしゃみや清涕の多発、寒冷時の症状増悪、息切れ、風邪罹患のしやすさを特徴とする。舌質は淡、苔は薄白、脈は虚弱を呈する。治法は益気固表・温肺散寒。
脾気虚証
飲食不節や過労により脾の運化が損なわれ、水湿が停滞しやすい。鼻汁が絶え間なく流れ、疲労感や食欲不振、軟便を伴う。舌質は淡胖、苔は白膩、脈は虚緩を示す。治法は健脾益気・燥湿化痰。
腎陽虚証
生来の虚弱や加齢により腎の温煦機能が不足し、体温調節が弱まり寒冷刺激に過敏となる。寒冷により鼻水が増悪し、四肢の冷感、腰膝の冷痛、夜間尿の増加を伴う。舌質は淡、苔は白、脈は沈細あるいは遅を示す。治法は温補腎陽・固摂納気。
複合証・その他
寒暖差アレルギーが慢性化すると、単一の虚証にとどまらず、複数臓の虚損が重なり合うことが多い。肺・脾・腎はいずれも衛気の生成や水分代謝に関わるため、いずれかの虚が長期化すると他臓に波及することがある。これにより鼻水が持続的に出続け、倦怠感や冷え、消化不良など多彩な症状を併発する。
さらに、長期にわたる症状や生活背景により情志の失調(ストレスや心労)が加わると、いわゆる肝気鬱結の状態を生じる。気機が鬱滞すれば津液の運行や鼻部の気機が妨げられ、鼻閉や頭重感が一層強まる傾向がある。また、長期間に亘る気機停滞によって瘀血が形成されると、鼻粘膜の腫脹や色素沈着、頭痛や局所の鈍痛を伴うこともある。
このような場合、治療は単に補益や温補にとどまらず、疏肝理気によって気の巡りを改善し、活血化瘀によって瘀血を解消する手法を加味する必要がある。
このように、慢性化した寒暖差アレルギーは「虚実錯雑証」として現れることが多く、治療においては標本主従を明確にして補瀉を行うことが肝要である。
