【中医学解説】吃音(重言)

目次

概要

吃音は、発話の流暢さに障害が起こる病態であり、音の繰り返しや言葉の詰まり、引き延ばしなどを特徴とする。現代医学では中枢神経系の機能異常や心理的要因、発達の遅れなどが原因とされるが、中医学では主に五臓六腑の失調や気血の運行障害を背景とし、経絡が滞ることで舌や喉の運動がうまくいかなくなると考える。

吃音は古典において「謇吃」「重言」などの名称で記述されており、風痰、気滞、血瘀、腎虚などの病因病機が主に挙げられてきた。舌は「心の苗」とされ、言語機能は心・脾・腎などの臓腑と密接に関わると認識されている。ゆえに吃音は単なる発語障害ではなく、心と体の調和が乱れた結果として捉えられる。

発症には情志の変化、過度の緊張、過労、先天的虚弱、慢性病後の衰弱などが関与する。虚実錯雑の状態が多く、実証(気滞・痰阻・血瘀)と虚証(心脾両虚・腎精不足)が複合して出現する例も少なくない。

弁証類型

肝気鬱結

精神的なストレス、緊張などの情志の乱れによって肝の疏泄機能が失調し、気の流れが滞ることで発症する。言語の滑らかさが気の巡りに依存していることから、気滞により舌や喉の動きが阻まれ、吃音が生じる。特に発話の最初に詰まりが出やすく、緊張時や人前での発言で悪化する傾向がある。胸脇の張り、ため息、怒りっぽさなどを伴うことが多い。る。

気鬱痰阻

気滞気鬱が持続した結果、気機の運行が停滞し、脾の運化機能や津液の運行に影響を与えて痰湿が内生する。内生した痰が気機をさらに阻滞し、舌や喉を流注する経絡をふさぐことで発語が円滑に行えなくなる。喉や胸のつかえ感、頭重感、倦怠感、口粘などの症状を伴う。

心脾両虚

思慮過度や慢性病後の体力低下、先天的な虚弱体質などにより、心血や脾気が不足し、発語機能に必要な気血が舌や咽喉に十分届かないことで吃音が生じる。吃音の程度・頻度は疲労や緊張により悪化しやすい。顔色が淡白で無力感があり、集中力の低下、健忘、不眠などを伴いやすい。

腎精不足

腎は成長発育や脳・骨・歯と深く関係し、言語の発達にも影響を及ぼす。先天的な虚弱体質や発育遅延により腎精が不足すると、舌の機能や咽喉機能の成熟に支障をきたし、吃音が現れる。幼児期の発語遅延や歯の生え始めの遅れ、夜尿・夜間尿、疲れやすさなどの所見が特徴的である。

痰瘀阻絡

気滞や痰湿の持続、あるいは血行不良によって瘀血が形成され、これらの病理産物が舌下・喉部の経絡に停滞することで発語運動が妨げられる状態である。舌が重い、しびれる、舌下静脈の怒張、舌質の紫暗などがみられる。吃音は慢性化しやすく、治療にも時間を要することが多い。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次