【過敏性腸症候群】鍼灸でのアプローチ【IBS】

1 過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群(IBS)とは、検査では炎症や潰瘍といった器質的疾患が認められないにも関わらず、下痢や便秘、腹痛、腹部膨満感、排便回数の異常といった症状が数か月以上にわたって持続するものをいいます。
過敏性腸症候群は主な症状によって、次の4つのタイプに分類されます。

  • 便秘型
  • 下痢型
  • 混合型
  • ガス型

1-1 便秘型


出典 : https://www.photo-ac.com/
便秘を主な症状とするタイプです。
腸の運動が低下したり、腸の神経の感度が鈍って便意が起こらないことが原因といわれています。
便が長時間にわたって体内に留まり、過剰な水分吸収が起こることで便秘となります。
こうした腸の運動や神経の問題に加えて、ストレスや疲労といった問題が関わる場合もあります。

1-2 下痢型


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突然起こる腹痛と下痢が特徴です。
大腸のぜん動運動が過剰になることで十分に内容物の水分が吸収されず、軟便や下痢になります。
外出中に便意を催すことがストレスとなり、外出困難になってしまうことがあります。

1-3 混合型


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下痢と便秘を交互に繰り返すタイプが混合型です。
数日単位で便秘・下痢の症状が交代し不安定な状態になります。

1-4 ガス型


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頻繁にお腹にガス(おなら)が溜まったり、ガスが出るのが特徴です。
腸内にはいつも一定量のガスがあるのが普通ですが、食生活や生活習慣など何らかの理由で腸内のガスがうまく処理されないため、お腹が張って苦しくなったり、人によってはガスの臭いが強くなってしまいます。
「ガスが出て周りに臭うのではないか」「ガスが出てしまうのではないか」と不安になり、そのストレスによって余計に症状が悪化することもあります。

2 過敏性腸症候群になる原因


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過敏性腸症候群が起こる原因は未だ、現代医学では解明できていません。
腸の収縮運動の異常や、腸に対する知覚過敏、遺伝や腸内細菌細、腸の粘膜の炎症などが関係しているといわれています。
原因が不明なため、過敏性腸症候群の治し方を知りたくても、なかなか良い方法がみつからず症状に悩まされている方が多いのも事実です。
また、過敏性腸症候群は精神的な緊張やストレスが影響していると考えられています。
脳がストレスを感じると腸の収縮運動が過剰になります。
そうすると、食べ物が消化されずに排出されて下痢が起こったり、腹痛が起こる場合があります。
過敏性腸症候群の方は食べ物による刺激だけでなく、ストレスによる刺激にも敏感なため、精神的な緊張や不安で症状が引き起こされることが多いようです。

3 鍼灸によるアプローチ

「過敏性腸症候群は鍼灸で治療できるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、過敏性腸症候群も治療可能な症状の一つです。
その効果は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)や、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク1:アメリカ国立衛生研究所
参考リンク2:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

一般的な投薬治療では、痛み止めや腸の動きを活発にする薬や下痢止め等を服用することで症状を抑えます。
投薬による治療を受けている方の中には、『薬を飲み続けるのは不安がある』『下痢型、ガス型には薬が効かないと聞いたことがある』『対処療法ではなく根本から治したい』と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。
一方、鍼灸治療による過敏性腸症候群の治し方は「症状が起こっている原因」を正すことによって、下痢や便秘、腹痛が起こりにくい身体をつくっていくことで症状を改善していきます。
ここでは、過敏性腸症候群の東洋医学的分類について、原因別に見ていきたいと思います。
東洋医学的には、「何らかの理由で食べ物や水分を運搬する働きが正常に機能しなくなったため、下痢や便秘、ゲップや腹痛といった過敏性腸症候群で起こりやすい症状が発症する」と考え治療にあたります。

冷えによる過敏性腸症候群


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身体が冷えることで、体内の食べ物水を運ぶ作用が低下したり、食べ物を消化する働きが低下して症状が起こります。
また、冷えによって過剰な水分が体内に停滞して水下痢が起こりやすくなる一方で、冷えによる頻尿で水分が過剰に排出されて、体内の水分が不足して便が硬くなり、便秘が起こる場合もあります。
このタイプは、手足の冷え、頻尿や腰や足の怠さを伴うことが多いです。

心身の緊張による過敏性腸症候群


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精神的な緊張が続くと、結果として身体も緊張しやすくなり、気血水の循環がスムーズにいかなくなるため、食べ物や水分を運搬する働きが低下して症状が起こります。
東洋医学的には、精神状態と身体状態とは必ず相互に影響し合うという考え方があります。
イライラしたり神経質になって気持ちが緩まないと、身体もそれに引きずられて固く緊張しやすくなると考えています。
このタイプはイライラや不安感によって症状が起こりやすく、ゲップや腹の張りを伴うことが多い特徴を持ち合わせています。

疲労による過敏性腸症候群


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身体の疲労によって食物を消化したり水分を運搬する力が低下し、食べ物が消化されないまま腸へ送られたり、腸が便を排出する力が弱まることで症状が起こります。
疲れによって更に食欲が減ったり、すぐに満腹になってしまう、動悸や息切れといった症状を伴うことが多いという特徴を備えています。

食物や水が溜まったことによる過敏性腸症候群


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油物・生物・甘い物・味の濃い物の食べ過ぎや水分の摂りすぎによって、体内に食物や水分が停滞し、消化や水分の運搬を阻害することで症状が起こります。
腹痛を伴う下痢が起こる場合が多く、排便すると一時的に症状が楽になるのが特徴です。
便の臭いが強くなったり、ゲップが出やすい、腹部の張りといった症状を伴うことが多いのが、このタイプの特徴です。

鍼灸治療で過敏性腸症候群が改善した症例

次に、鍼灸治療で過敏性腸症候群が改善した症例を2例ご紹介したいと思います。
どちらの症例も、一度の施術で使うツボは1つで、施術時間は休憩含めて1時間程度です。

出典 : https://www.photo-ac.com/
なお、使用したツボは敢えて明かしていません。
というのは、人間の身体は全身の状態が複雑に絡み合っているため、「このタイプの過敏性腸症候群=このツボ」という簡単な方程式は成り立たず、似たような症状であっても同じツボを使えるとは限らないからです。
ツボを選定する際にはその人の症状だけでなく、その人の体質その時の体調施術をする時の気候、さらに言えばその人の性格までを考慮しなければ、シャープに効かせることはできません。
これら全てを考慮にいれて、やっとオーダーメイド治療となるのです。
安易にツボをいじくりまわすのは絨毯爆撃のようなもので、たまたま当たることもありますが、間違って健康を損なう場合もあります。

過敏性腸症候群の症例1

【患者】40代女性、事務職、身長165cm、体重42kg。
【初診】201X年3月XX日
【主訴】頻回下痢
・電車やバスなど逃げられない状況になると腹痛・下痢する。
【問診】
幼小期より、緊張するような場面になると腹痛・下痢していたが、日常生活に支障がでるほどではなかった。
35歳頃、仕事のプレッシャーとプライベートでのストレスが重なりパニック障害を発症。
この頃から電車やバスや会議など、自由にトイレに行くことのできない環境下にあると、腹痛・下痢をするようになり始めた。
この傾向は徐々にひどくなり、腹痛・下痢してしまう不安感から、食事量を大幅に制限するようになる。
エネルギー不足を補うため、あめ玉やチョコレートなど、少量で高カロリーなものを積極的に摂取する習慣が身についた。
その後症状は緩解することなく、徐々に悪化傾向にある。
【初診時の症状】
・腹痛・下痢
・安静時の動悸
・頻繁な中途覚醒
【特記事項】
・腹部全体が硬く膨満している
【診断と治療方針】
心身の過緊張・不適切な飲食により消化吸収機能が障害されていると判断。
従って、胃腸の働きを改善すると共に、精神的負荷により生じた緊張癖を取り除くよう処置。
【日常生活での注意点】
・お粥、温野菜を中心に消化に良いものを摂取する。
・のぼせない程度にお湯につかって、体を温めてゆるめる。
【経過】
初診~15診、徐々に腹痛・下痢が改善すると共に動悸・中途覚醒が無くなる。
30診経過後、食べ過ぎたり甘い物を過食しない限り、腹痛・下痢が生じることはなくなった。

過敏性腸症候群の症例2

【患者】20代男性、営業職、身長178cm、体重82kg。
【初診】201X年2月XX日
【主訴】臭気の強いオナラと胃もたれ
・仕事中どんどんとお腹が張ってガスが溜まり、放屁すると臭いがきつい。食後胃もたれがきつい。
【問診】
よく食べてよく運動する活発な子供であった。
大学卒業までテニスを続けており、足の捻挫以外で病気やケガをした記憶はない。
就職後、運動不足と外食の連続で徐々に体重が増加。
営業に伴う飲み過ぎ食べ過ぎが続いているせいか、1年ほど前から食後に胃もたれを感じ始める。
同時期に、頻繁に臭気の強いオナラが出るようになる。
【初診時の症状】
・臭気の強いオナラ
・食後の胃脘部膨満感
【特記事項】
・他覚的に足全体が浮腫んでいる
【診断と治療方針】
不適切な飲食・運動不足により消化吸収機能が障害されていると判断。
従って、胃腸の働きを改善し老廃物をしっかりと排出できるよう促すこととする。
【日常生活での注意点】
・腹8分に留める。腹8分に留められなかった場合は、次の食事量を落としてトータル摂取量を調節する。
・軽く運動するよう心がける。
【経過】
初診~3診、大量の臭い便が出る。大便が出た後は胃もたれがスッキリしていた。
4診~12診、ガス溜まりが徐々に改善。臭いもあまりしなくなった。
13診以後、ガス溜まり胃もたれ無し。

まとめ


出典 : https://www.photo-ac.com/
今回は過敏性腸症候群について、症状ごとのタイプや原因、治療方法について解説しました。
東洋医学においても、過敏性腸症候群に対する治療が可能なことはご理解いただけたでしょうか。
治療や養生指導を行う上で、過敏性腸症候群がなぜ起こっているのか、原因やメカニズムを明確にすることが必要になってきます。
そのためにも、東洋医学では、先程のような分類に加えて、その方の体質や体調、性格や環境、気候なども考慮した上で、可能な限りその人個人に合ったもの、オーダーメイドの治療を提供しています。
鍼灸治療の場合、治療院によって色々な治療スタイルがあります。もし過敏性腸症候群の鍼灸治療を受けてみたいとお考えの際は、その鍼灸院がどんな考え方や方法で施術を行っているのか、下調べをした上で受けてみるのも良いかもしれません。
その際は、ぜひ今回ご紹介した内容も参考にしてみてください。

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